青木賢人(1994)
モレーン構成礫の風化皮膜の厚さから推定した
中央アルプス北部における氷河前進期
地理学評論,67A(9),601-618
木曽駒ヶ岳周辺における、新期モレーンを構成する礫に形成された風化皮膜の厚さは平均4〜8mmであった。その結果を、柳町(1983)によって得られた千畳敷カールのモレーンの形成年代と対比することによって、モレーン構成礫の風化皮膜の厚さと形成年代との関係を、ベキ関数および対数関数で回帰し、風化皮膜の発達曲線を求めた。それによって、年代未詳のモレーンの風化皮膜の厚さから、モレーンの形成年代を推定した。その結果、調査地域の氷河前進期は古い方から3.5万年B.P.前後の伊奈川期(最終氷期前半の亜氷期),2.0万年B.P.前後の西千畳敷期(最終氷期極相期),1.0〜1.4万年B.P.前後の三ノ沢期(晩氷期中の新ドリアス期)に区分できた。これらの氷河前進期の区分は、統計的にも妥当である。